申請書
Memo
下書き(日本語)
1.1 Scientific rationale:
分子雲は、clumpやcoreといった高密度構造を入れ子状に含む階層的な内部構造を持つことが古くから知られている。しかし、この階層性が星形成、とりわけ大質量星形成に対してどのような役割を果たしているのかは、依然として未解明である。我々はこの問いに取り組むため、野辺山45m鏡FUGINレガシーサーベイの¹³CO(J=1–0)データにdendrogram解析を一様に適用し、銀河面上の13の星形成領域において、階層構造(trunkとその内部のleaf)と階層を持たない孤立構造(isolated)を統計的に比較した。
領域間の環境差を統計的に制御した比較から、次の非対称が明らかになった。低質量星をトレースするYSOの内包数はleafとisolatedで有意差を示さない一方、大質量星のprecursorであるHi-GALクランプは、leafにおいて有意に多い。すなわち、階層環境は大質量星形成の側にのみ選択的に効いている。さらに、ガスからクランプへの質量変換効率には両者で差がなく、leafはisolatedより有意に大質量である。したがってこのクランプ形成の促進は、変換効率の向上ではなく、階層構造が集めたガス量そのものに起因する。
この解析に用いた¹³CO(J=1–0)が捉えるガスの密度はn ~ 10³ cm⁻³程度であり、より光学的に薄いC¹⁸Oを用いてもn ~ 10³·⁵ cm⁻³にとどまる。一方、星形成が実際に進行するのはn ≳ 10⁴ cm⁻³を超えた高密度ガスに限られる。とりわけ大質量星形成については、銀河系内の大質量星形成領域のclumpにおいて、星形成率を反映する赤外光度が高密度ガスをトレースするHCN光度と線形に相関することが示されており、その活動度は領域が蓄えた高密度ガスの量に規定されている。
したがって、階層構造と大質量星形成の関係をさらに詰めるには、リザーバを捉えるCOと、既に形成されたprecursorの計数であるクランプカタログとのあいだで、両者を実際に媒介する高密度ガスそのものを観測することが不可欠である。HCN(J=1–0)は、クランプを構成する高密度ガス(n ≳ 10⁴ cm⁻³)をガス輝線として捉える確立された高密度トレーサーであり、Hi-GALクランプとは対象(高密度物質)を、COとは速度情報を含む観測様式を共有する唯一の中間層である。これにより、リザーバから大質量星precursorに至る質量集積の過程を、単一の枠組みで追うことが初めて可能になる。ダスト連続波カタログには速度情報がなく、CO階層との運動学的な対応はガス輝線によってのみ検証できる。